植物について思うこと。

植物はペットと比べ表情や動きに極めて乏しくしかも、

ペットのように泣いたり、吠えたりして自分の要求を相手に伝えることができません。

人が手を貸さない限りその場を動くことが出来ません。

しかし、その場を動かないからこそゆっくりとした時間の流れの中で

その生長や表情を楽しむことができます。

動物よりも健気で慎ましやかな感じがします。

植物と上手く付き合うことで、日々の生活に深みを感じることができると思っています。

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庭について思うこと。

いろいろな形態の庭がありますが、

一番身近にある小さな自然が庭であると思っています。

ある庭は樹木・草花・石等がきっちり納まっていて枯れ葉が落ちているのも

許さないようなものもあれば、

雑木があり園芸種と雑草が混ざり合って生えていて

何処に足を進めていいのか分からないようなものもあります。

どの庭もその家の方の考えでそうなっているもので、

庭はその家の方の自然に対する考え方の鏡だと思っています。

また、庭は移り行く季節を感じたり、動植物の成長を観察したり、陽光の陰影を楽しんだり、

年月を経るほどその姿を変えつつその家の方にとって味わい深いものになってくると思います。

そう思うと庭というのは、決まった形などというものは無く

百人の人がいれば百通りの庭があって当たり前で

それは全く普通のことだと思います。

自分が自由に楽しむことの出来る自然であると思います。

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枝の伸び方について思うこと。

強く剪定すると徒長枝(極端に真っ直ぐ長く伸びる勢いのある枝)が出ます。

弱く剪定すると徒長枝はあまり出ません。

その理由はすぐに芽を吹かせることができる箇所の数にあると思います。

芽が吹きやすい箇所というのは、陽がよく当たる木の外側の若い枝です。

若ければ若いほど芽は吹きやすく、古い枝からは吹きづらいです。

このことから強く剪定すると目が吹きやすい箇所が極端に少なくなり、残った数少ない芽に

栄養が集中するため、そこから伸びた枝は極端に長く成長し、

弱く剪定すると芽が吹きやすい箇所が数多く残るため、栄養が分散し

徒長枝があまり出ないと考えられます。

刈り込みを考えたときに、弱く刈り込むと芽が吹きやすい箇所が多く残る、

強く刈り込んでも、芽が吹きやすい箇所はなくなりますが、芽の吹きづらい箇所が

表面に均一に数多くあるので徒長枝はあまり出ないと考えられます。

思うに、強い剪定を何年も続けると幹に陽の光の当たる時間が多くなり

幹からも厚い樹皮を突き破って芽が吹いてきます。

その箇所で切っては吹きを繰り返すとそこがコブになりとても見苦しくなります。

また強い剪定の場合は枝を幹に近い太い場所で切り落とすことになるので、

切り口が大きくなり、塞がるのに時間がかかるため腐食されやすくなります。

また、2~3年に一回の割合で強く剪定するというような場合、その間は枝葉が伸び放題で

幹・枝がどんどん太くなり、勢いがつき制御が難しくなります。

生えている場所が広ければ、それでも構わないと思いますが。

なので狭い場所に生えている木では、一年の間に何回か弱く柔らかい剪定をする方が

良いと思っています。

(樹種によって芽の吹きやすさ、徒長枝の出やすさは違います。)

 

剪定について思うこと。

大抵の場合に庭は家の南側に作り、そこに樹を何本か植え草花を植えます。

その場合に樹は陽の光を求めて家とは反対側の南側に

より多く枝を張り、葉を茂らせ、花や実を多くつけますが、

北側はというと家や他の樹の陰に入り朝と夕方の陽が当たらなかったり、

南側の枝葉が茂れば茂るほど陽の当たる量が少なくなり、

枝がまばらになり葉や花も少なくなっていきます。

(周囲に何も無い場所で一本だけ植えてあるなら話は別ですが)

そこで樹の表と裏を考えたとき、

樹勢のある南側が表、その反対の北側が裏と考えることができます。

それを家の中から見ると枝葉や花のまばらな樹の裏側を見ることになります。

そうならないように剪定はあると思っています。

剪定は樹の懐に陽の光を取り込む事だと思っています。

枝ぶりや方向の良い枝を生かし、そうでないものは剪んで枝葉を透かし

より効率的に陽の光を樹の懐に取り込み、

北側にある葉に陽の光を当て樹勢を保つことができます。

また、樹の懐に陽の光が入ることによって、

そこから新しく萌芽させ更新用の小枝を育て次の剪定に備えることができます。

この更新という作業は限られた空間の中で樹の大きさを維持しながら

美しく保つために必要なことだと思っています。

それ以外にも剪定をすることによって風通しが良くなり、

同時に弱い雨でも全体の葉に雨水がとどき、葉に付いたホコリ等を洗い流すことができ、

害虫や病気に侵されにくくなります。

また、樹と家の窓が近い場合には部屋の中にも陽の光が差し込み明るくなります。

剪定についていろいろ書き連ねましたが、

条件が許せば木には自由にのびのびと成長させてあげるのが一番だと思います。

 

植栽について思うこと。

新しく家が建った時の状景を想像してみると

家のまわりに植物が植えられているのものが思い浮かびます。

もしその家のまわりに植物が無い時の状景を想像してみると

無機質なというか、生命感のない感じがしてなりません。

実際に仕事で新築物件の外構の植栽工事をするのですが、

施工前と施工後ではかなりの違いがあるように思います。

おおげさですが、建物に生命を吹き込んだように感じられます。

それを特に感じるのが全て植え終わって、それなりの手入れをして、きれいに掃除をして、

最後に水をやるのですが、その時です。

水分を得、生き生きとした植物は建物に生命感を与え、建物をより一層引き立てる様に思います。

とても充実感があり、この仕事をしていて良かったと思います。

 

剪定時期について思うこと。

基本的に木の生長を抑制し大きさを維持するくらいの剪定をする場合には

春と秋の年2回の剪定が良いと思います。

春、温かくなると、常緑樹も落葉樹も勢いよく枝葉を生長させます。

この時に常緑樹は強めに、落葉樹は軽めに剪定します。

落葉樹を強く剪定すると枯れる恐れがあります。

そうすると、夏場にまた枝葉は茂りますが、秋の剪定時期までは手入れした感じを維持出来ます。

夏の暑い時期はあまり剪定すると木が弱りすぎたり、樹皮が乾燥して剥けたり、

枯れたりするので避けた方が良いです。

しかし、枝先を少し切る程度の軽い剪定は構いませんし、

木の生長を抑制し大きさを維持するためには、むしろ有効だと思います。

秋、寒くなると常緑樹は生長が極端に遅くなり、落葉樹は葉が枯れ休眠期に入ります。

この時に常緑樹は軽めに、落葉樹は強めに剪定します。

そうすると、冬場の日差しが欲しい時に良い感じに取り入れることが出来きます。

年1回の場合には秋が良いと思います。

秋に剪定すると来春の芽吹きまで約半年は手入れした感じを維持することが出来ます。

その代わり夏の間はうっそうと繁茂した感じを我慢しなければいけません。

これに考慮すべき事として

剪定する木の場所・樹勢・生長の仕方・花の時期・果実の付き方等のいろいろな性質があり、

それによって手入れ方法を考えなければいけません。

 

枯れる原因について思うこと。

植物が枯れる原因は自然によるものと人によるものがあると思います。

自然によるもの中には

1.虫などに葉・幹を食害される。

2.病気が蔓延する。

3.高温・低温・乾燥・強風等の気象現象。

4.根元の土中にアリの巣やコガネムシの幼虫がいる。

5.モグラの通路が出来ている。

6.土壌が合わない。

7.周囲の木が大きくなり陽が当たらなくなった。

人為的なもの

1.枝葉を切りすぎた。

2.空調の室外機・ガス給湯器に近い。

3.自動車の排気ガスが当たる。

4.庇やベランダの下にあり、雨が当たらない。

5.鉢物などの水やり不足。

6.近くで散布した除草剤が風で飛んできた。

7.踏圧等で根元の地面が固くなり雨水等が浸透しない。

8.木の根元に余った土を捨て盛り上がると、根が吸水しづらくなる。

どれもよく見てあげていると防げるものばかりです。

よく見てあげる事が大切だと思います。

 

日向の木・日陰の木について思うこと。

日向に生えている木と日陰に生えている木とでは

同じ木でも生長のしかたが異なり、樹形が変わってきます。

日向に生えている木は陽光が良く当たるため生長が速く、

節間長(枝に付いている葉と葉の間隔)が詰まり、太く逞しい樹形になり、

花付きが良くなり、実は大きくなります。

年1回通常の剪定した場合、生長の方が速いため元の大きさを維持出来ない場合があります。

強く剪定すると徒長枝が出やすくなったり、あらわになった大枝や幹の不定芽から

細かい枝が密生したりし、見苦しくなります。

日陰に生えている木は陽光があまり当たらないため生長が遅く、

節間長は長くなり、細くしなやかな樹形になり、花は付きにくくなります。

年1回の通常の剪定で大きさを維持出来る場合が多いです。

これに加えて陽樹・陰樹という性質があります。

陽樹は日当たりが良くなければ健全な生長は見込めませんし、

樹種によっては枯れてしまう事もあります。

陰樹は日当たりが良くなくてもそれなりに生長し、

日当たりが良ければ更に良く生長する場合があります。

お庭の手入れをするときに、

高木・中木・低木・草花が折り重なって植えられている場合が往々にしてあり、

植物の性質と日当たり加減との妥協点を考える必要があります。

 

幹の太さについて思うこと。

木は年々生長し大きくなっていきます。

限られた空間の中でそれを維持していくためには剪定という作業が必要になってきます。

通常の剪定をすると木の外回りの大きさが一回り二回り小さくなりますが、

木の幹は決して細くなりません。

年1回の強い剪定や年2回・3回の剪定をして生長を抑制しても

木の幹は少しずつ太くなり続けます。

一番良くないと思われるのが、3・4年くらい放っておいて大きくなりすぎてから、

幹から出ている太い枝を元から切り、幹を中段あたりで切るような、

かなり強い剪定をしなければならないような状況になる事です。

3・4年の間に木は大きく枝葉を生長させ、幹はどんどん太くなっていきます。

その様な切り方をすると切り口が大きいため、なかなか塞がらず、

切り口から腐りが入ったり、樹液の流れが滞るなどして

枯れたり、寿命が短くなるなどの原因になります。

では、なぜ幹が太くなりすぎると良くないかということを考えます。

限られた空間の中では、美しいと思える木の枝葉の大きさは

おのずと決まってしまいます。それを超えたときに剪定をして

所定の大きさ、もしくは少し小さめに仕上げますが、

この時、枝葉が茂っている部分と幹の太さのバランスを考えると

幹が太いのに、それに生えている枝葉が小さいとアンバランスで不格好な感じになり、

美しいとは言えません。

自然にある木が美しいと感じるのは、ある意味で空間の制限がなく

自由に枝葉を生長させることで、枝葉と幹のバランスの良さがひとつあると思います。

このような事を考えると、木の生長を調整し、木のバランスを維持する事や

花や果実・緑陰などを毎年楽しむためには、それなりの手入れが必要だと思います。

 

植木屋さんと床屋さんについて思うこと。

床屋さんや美容師さんの髪の毛を切る技術の事は分かりませんが、

植木屋さんと床屋さんの仕事を考えると大小はあるもののどちらもハサミなどを使って

長く伸びたものを切る仕事です。

大きく違うのは髪の毛は頭皮の中の毛根から伸びて来ることで、

太さは変わりありません。(年を取ると細くなりますが。)

木の枝は先端が伸び、枝元は年々太くなります。

なので髪の毛は伸びたところを切りますが、

木の枝は今年伸びた枝だけを切るのではなく、太くなった枝の元の方から切り、

その奥から生えている若い枝を枝先を切らずにそのまま残します。

以前、剪定を見ていた奥さんがこう言いました。

「剪定って今年伸びた枝を切るんじゃないんだ。」

実はそうなんです。

太い枝の途中から細い枝がたくさん出ているととても見苦しく、

本来の樹形とはほど遠い感じますし、そよ風で枝先がそよぐ感じにはなりません。

また、多くの木は花を枝先に付けます。

伸びた枝先を切ると花付・実付が悪くなってしまいます。

思うに、両者は似て非なるものだと思います。